Fairfield by MARRIOTT (2020‐2021) Vol.1_岐阜

2022.6.13

積水ハウス株式会社とマリオットインターナショナルによる地方創生事業「TRIP BASE 道の駅プロジェクト」のホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」。株式会社アールアンテルの一員としてプロジェクトに参画。岐阜・三重・和歌山に竣工した全8棟のラウンジライブラリーのコンセプトワーク、及びディスプレイを担当。その地域の風土、歴史、文化に添った品を選定し、一からデザインした特注品や復元作業を交えながら展示構成した。

 

Mino, Gifu

フェアフィールド・バイ・マリオット岐阜美濃

岐阜県美濃市を中心につくられる「美濃和紙」は「日本三大和紙」のひとつに数えられ、1000年以上の歴史がある。中でも、厳選した素材で手漉きされる「本美濃紙」の技術は、 2014 年にユネスコ無形文化遺産に登録 され、国宝級の古文書や絵画の修繕に使用されるなど海外からも高い評価を得ている。

水うちわ(棚右中段)

雁皮(がんぴ)と楮(こうぞ)のみを使用した水うちわは、岐阜県の伝統工芸品指定。水に浸してから仰ぐと涼風が楽しめる。

折形(棚右下段)

折形は600 年以上続く武家礼法の一つ。祝儀袋などで馴染みがあるが、展示品は美濃の若手作家の手漉き和紙を使い、広く折形の魅力を伝える「折形デザイン研究所(東京)」の意匠。

和傘(棚左上)

和傘_観賞用豆傘_落水紙を使用して糸かがりを施したもの<拡大写真>。郡上本染の藍染和紙を使用傘共に高橋和傘店製作。岐阜和傘は、2022年国の伝統的工芸品に指定されている。

手漉き透かし和紙(棚中央)

透かし和紙のパネル_麻の葉と青海波(せいがいは)の手漉き透かし和紙を貼り分けたオリジナルオブジェ。フレームの木材は、地元以安寺から切り出されたヒノキ材を使用。

 

Gujo, Gifu

フェアフィールド・バイ・マリオット岐阜郡上

重要無形民俗文化財指定の郡上おどりは、約420 年の歴史があり、江戸時代中期の藩主・青山氏の時代に人心の安定と融和を図るために奨励され盛んになったといわれる。夏の 2 ケ月間にわたり約 30 夜開催する郡上おどりの最大の特徴は、観る踊りではなく参加する踊りであるところ。老若男女、地元の人も観光客も一緒に踊り、盂蘭盆会の 8 月 13 日から 16 日までの 4 日間は翌朝まで踊り明かす徹夜おどりで賑わう。

シルクスクリーンの鼻緒(棚左上)

郡上は日本におけるシルクスクリーンの発祥の地といわれる。はっきりとした色合いが美しい。

ヒノキから削り出す踊り下駄(棚左中央)

地元のヒノキから削り出されてつくられる歯と一体型の踊り下駄。歯が減ることがあっても外れることがない。鼻緒、下駄共に郡上木履製。

藍染めタペストリー(棚中央)

鯉のぼりの寒ざらしで知られる「かちん染め」と暖簾などで知られる「藍染」。郡上踊りと同じく 400 年以上の歴史を持つ伝統の染めの技法を今でも唯一継承している「渡辺染物店」製。

 

Minokamo, Gifu

フェアフィールド・バイ・マリオット岐阜清流里山公園

ホテルからの至近距離には可児、土岐など美濃焼の産地が広がっている。中でも多治見は焼物の産地として 1300 年以上の歴史があり、古墳時代の須恵器、鎌倉・室町時代の山茶碗から現代の陶芸に至るまで 、時代毎にモノを作り続けている。火に強い特性の土を使った「袋もの」といわれる徳利を生産する高田地区、茶碗や丼といった日用品やタイルなどの工業製品を生産する笠原地区、山が深く物資の運搬は尾根を馬車でしていたため、原料や製品の輸送が容易な小さい盃の産地となった市之倉地区と、地の利に適った生産背景がみられる。本展示は市之倉さかづき美術館の全面協力を得て行った。

可笑盃(棚右上)置くとたおれてしまう可盃(ベクハイ)や、吸いながら飲むとウグイスの鳴き声のような音のする盃など遊び心満載の盃コレクション。

ろくろ(棚右中央)アンティークの手動ろくろ。

粘土ヘラ 実際に作陶で使われていたもの。幸兵衛窯から提供。

美濃焼4種 美濃の4大焼物と呼ばれる織部・志野・黄瀬戸・瀬戸黒のぐい吞みは加藤亮太郎氏作。ろくろの展示台と共に、ケースはどちらも美濃で技術を習得した木工作家の吉川和人氏に製作を依頼した。

**「TRIP BASE 道の駅プロジェクト」第 Ⅰ 期 15ヶ所のホテル全客室に、加藤亮太郎氏筆の『くさまくら』が掛けられている。

 

 

 

 

 

 

 

Shokawa, Gifu

フェアフィールド・バイ・マリオット岐阜高山荘川

地元飛騨の木材を中心に、モダンな空間に合わせてアレンジされた伝統的な技法やモチーフのアイテムで構成。豊かな森林資源と時流に日々向き合い、技を磨き続ける飛騨の匠の今を収めた。

曲木パネル(棚中央)

飛騨産の杉のパネル。伝統工芸品の新たな形について寄せられた高山市民のアイディアを塗師、木地師、彫師、木工家の 4 人から成るジャンルを越えた職人チーム「 PASSE 」が形にしたもの。

飛騨刺し子・さるぼぼの積木(棚左上)

貴重な織物を補強したり、女性が自分好みの紋様や図案を縫い付けてお洒落を愉しむために施された刺し子。七宝や麻の葉など吉祥紋様を組み合わせたオリジナル図案のパネルは「飛騨さしこ」製。手前の積木は、子供の成長や安産を願うさるぼぼの形を象った白百合工房の「つみぼぼ」。

漆掻き道具(棚左)

飛騨地方においても漆の歴史は縄文時代にまで遡る。江戸時代に春慶塗が始まり、漆器の一大産地となるも、昭和中期から地元で採取される漆がほぼなくなり国内の別の産地や輸入品(主に中国)に頼る状況が続いている。現在、飛騨産漆の再生に向け、漆掻き文化の継承が取り組まれている。展示は、掻いた後伐採された漆の木、朴の木の皮でつくられた採取した漆を入れる桶、掻き道具一式。

飛騨春慶の遊山箱(棚中下)

岐阜県指定伝統工芸品、飛騨春慶の手提げ箱付 5 段重。遊山箱と呼ばれるピクニックボックス。当ライブラリーのためにデザインした特注品。黄春慶。塗は阿多野春慶、木地は木工舎西為。

杉の花瓶・一位一刀彫(棚右)

間伐材の飛騨産杉のノクターレ製作のフラワーベース。一位一刀彫の猫はロウ引き仕上げ。彫は鷲塚彫刻。

広葉樹のオーバルボックス棚右下)

地元の作家、まる工芸のオーバルボックス。硬い広葉樹を曲げる高度な技術と燕尾型の合わせ部分のデザインが特徴的。

 

*全ライブラリーの選書=株式会社アールアンテル