漆の森の再生に携わる理由

2022.6.25

有志が集まり2022年春に発足した「飛騨漆の森プロジェクト」に参加しています。

そもそものきっかけは10年前の2012年に遡ります。茶道の師匠や一緒に稽古をしている皆さんと東京から高山を訪ねた折り、春慶の塗師さんの工房を訪問した際の言葉に衝撃を受けました。

「後継者はいない。買ってくれる人が減ってしまって、仕事として厳しいから子供に継がせるつもりもない・・・。」

「えっ? お正月は春慶のお重、と子供の頃からハレの日の大切なものがなくなる?」

さらに、縄文時代より地産漆を使う暮らしが営まれてきた飛騨ですが、現在は栽培がほとんどされていなく、伝統的工芸品に指定されている飛騨春慶も輸入の漆に頼っている実態を後になって知ります。

ウルシは日当たりが悪かったり、他の枝に触れたりすると漆液が採れません。人の手入れが不可欠です。1000年以上続いてきた漆との共生が、ここ数十年で絶えようとしていることに危機を感じ、希薄になってしまった自然との繋がりをもう一度思い出す必要があるのではないかと考えるようになりました。

技術の継承も、素材そのものの漆も絶えようとしているなんて!

何かできることはないかと思っていた頃、同じく危機を感じていた職人の皆さんに漆苗づくりをしようと声をかけていただきました。その後すぐに、奇しくも同じタイミングで高山市内で漆の栽培に取り組み始めた他の方々と合流して、2022年春に「飛騨漆の森プロジェクト」が発足しました。

山や森とはほぼ無縁の街中で今まで暮らしてきましたが、今ここで立ち返り、自然環境に対してできることをして豊かな営みを築くために、漆の森の再生に取り組みはじめています。