Fairfield by MARRIOTT (2020‐2021) Vol.2_和歌山・三重

2022.6.21

積水ハウス株式会社とマリオットインターナショナルによる地方創生事業「TRIP BASE 道の駅プロジェクト」のホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」。株式会社アールアンテルの一員としてプロジェクトに参画。岐阜・三重・和歌山に竣工した全8棟のラウンジライブラリーのコンセプトワーク、及びディスプレイを担当。その地域の風土、歴史、文化に添った品を選定し、一からデザインした特注品や復元作業を交えながら展示構成した。

 

Susami, Wakayama

フェアフィールド・バイ・マリオット和歌山すさみ

地元すさみの立野(たちの)遺跡から発掘された弥生時代の土器や木製品の復元品を中心に、和歌山県の伝統工芸である漆の根来塗や真田幸村が九度山に隠居の際につくったとされる真田紐で構成した。

 

真田紐(棚左上)

真田幸村が関ケ原の戦いのあと隠居先の和歌山県九度山でつくっていた織紐。たて糸のみで紐を織り込む。大箱はつづら掛け、小箱は四方掛けの結び。

立野遺跡出土木片レプリカ(棚左中)

立野遺跡から出土した、弥生時代(2300年前)の鍬など農具の木片レプリカ。当時これらの木製品は地元で使うだけでなく、川や海に面した立地を活かし、木工品を量産して日本各地へ流通していたと考えられている。制作協力:和歌山県立紀伊風土記の丘。

立野遺跡出土土器復元(棚中央)

同じく立野遺跡出土の弥生土器を復元したもの。鉄分の少ない土を低温で焼き、当時の白さを再現した。制作協力:和歌山県立紀伊風土記の丘。

根来塗の壺と盃(棚右下)

鎌倉時代に根来寺(岩出市)の僧侶がつくった膳や盆がはじまりといわれ、朱塗りの下の黒漆が所々見えるのが特徴。展示品は現在も漆器の町として有名な海南市黒江町で制作された。盃は瓢箪とみかんの皮に漆を塗ったもの。みかん盃の内側には鯛の蒔絵が施されている。壺:谷岡漆芸店、盃:林克彦(伝統工芸士)。

 

 

Kushimoto, Wakayama

フェアフィールド・バイ・マリオット和歌山串本

水門祭(みなとまつり)、河内祭(こうちまつり)など各地域の祭りや漁業など、暮らしと文化が海とともにある本州最南端に位置する串本。県無形文化財指定、大島地区の水門神社の例祭「水門祭」のハイライトである櫂伝馬競漕の船と、艫櫂(ともかい)、櫂の縮小レプリカを一から制作し、漁業にまつわる小物を加えて展示。県の伝統工芸である根来塗の技法を用いた金属のオブジェと、串本がトルコのメルシン市と姉妹都市であることからトルコ陶器を添えた。

櫂伝馬船模型(棚左上)

二艘ある水門祭櫂伝馬競漕の船の一つ「はやぶさ」の模型。実物を採寸し、芝藤船舶設計研究室(高知)にて製作した特注品。

櫂伝馬船の艫櫂と櫂(棚中央)

毎年2月に大島地区で行われる水門祭の櫂伝馬船の櫂のレプリカ。大きい方が船の進む方向をコントロールする艫櫂、小さい方は漕ぎ手の櫂。どちらも実物を採寸し、縮小したもの。

根来塗にインスパイアされた花器とペーパーウェイト(棚右)

型から押し出して成形した金属に塗りを施し、凹凸のある表面を県伝統工芸品の根来塗のように研ぎ出す事でアルミと塗りの縞模様浮かび上がる一輪挿しと、金属の多面体に塗りを施しでエッジ部分を研ぎ出したペーパーウェイト。KISHU+制作。

 

Mihama, Mie

フェアフィールド・バイ・マリオット三重御浜

2300万年という悠久のときを経た「那智黒石」を主題とした。那智黒石は、新第三紀中新世の熊野層群からのみ採取される黒色で硬質の粘板岩。江戸時代には、七里御浜で採取された那智黒石が庭園用の玉石として用いられており、貞享3年(1686年)刊の井原西鶴の『好色一代女』巻五には「盆山に、那智石を蒔きて」との文が遺されている。県指定伝統工芸品。 

 

天然那智黒石 原石(棚中央)

那智黒石の原石。表情が出るように一部分を磨いて仕上げている。制作:仮谷梅管堂。

蓋付硯棚左 書籍「SHODO」前

一枚の天然那智黒石を割って、身と蓋にした蓋付硯。蓋を閉めるとに、すっと吸い付くように閉まるのが特徴。制作:仮谷梅管堂。

那智黒石釉のオブジェ(棚右中)

那智黒石の粉末を調合した釉薬用いた陶磁器。陶芸家 大西佑一 氏独自の含有率、焼成温度でこの淡いブルーを表現している。

 

Odai, Mie

フェアフィールド・バイ・マリオット三重おおだい

大台町(旧宮川村)は水質日本一を誇る宮川と原生的な森林の吉野熊野国立公園大台ヶ原の麓に位置し、その宮川によって森の栄養分が運ばれた伊勢市大湊周辺には豊かな漁場が育まれている。大台産木工品を山の象徴として、古くは造船に使われていた大湊で生産される和釘を海の文化として、宮川を通じて繋がる山と海の営みを2面のシェルフに収めた。その他、伊勢型紙の扇子、萬古焼や伊賀焼の花器、那智黒石など三重の工芸品とともに構成している。

 

 

-山-

大台の木材を使ったフォトフレーム(棚左上、右下)

大台産のもみじ、みずめ、朴の木を使ったフレーム。装飾は全て手彫り。大台の作家 村田一紗 氏製作。

宮川河原の小石にインスパイアされた意匠のミラー。地元額縁メーカーの色紙額製造技術をアレンジしたもの。木材に金色塗装。デザイン・製作共に地元作家による。デザイン:吉川和人、製作:三重額縁、脚(真鍮)製作:Nijiiro。

アクアリウムと書見台(棚左)

大台産の木材を使って地元に工房を持つ吉川和人氏が製作。アクアリウム、書見台ともに樹種はエンジュ。

ボウル類とブックエンド

同じく吉川和人氏製作。黒っぽい大き目のボウルはサクラ、白い浅めのボウルはトチ、ブックエンドにはナラ材を使用。

-海-

和釘見本パネル(棚中央)

一本一本すべて手打ちで作られる和釘の見本パネル。上「手違いかすがい」右「舟釘」下「平かすがい釘」、小さいL字の釘は「折合釘」。釘製作:久住商店、額縁製作:三重額縁。

節を避けて曲がる和釘(棚右上)

やわらかい和釘は節をさけて曲がるため、無理な力が加わり割れてしまうことがなく、木材を傷めない優れた特徴をもつ。

 

*全ライブラリーの選書=株式会社アールアンテル